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ウヴェ・フリック , 鈴木 聡志 訳『質的研究のデザイン (SAGE質的研究キット) 』,2015. 第4章

第4章について
ウヴェ・フリック , 鈴木 聡志 訳『質的研究のデザイン (SAGE質的研究キット) 』,2015. 第4章
「質的研究のデザイン」について
 
〇研究デザインとはなんだろう?
 
研究デザインとは研究の焦点を減らすことらしい。あれこれややこしくしないで焦点を定めるってことなのかな。
 
 
この章はRaginのこんな言葉の紹介から始まっている。
 
研究デザインとは、研究者が提起した問いに答えることを可能にする、証拠の収集と分析のための計画である。1つの研究についてのデザインは、 データ収集の細部からデータ分析の技法の選択まで、研究のほぼすべての側 面に及ぶ。」 (Ragin, 1994, p.191)
 
 
質的研究が良く批判される曖昧さ。
マイルズ とヒューバーマンわざわざ、
 
「あなたが聞いたかもしれないこととは反対に、 質的研究のデザインは存在するのである」(Miles & Huberman, 1994, p.16)
 
と 指摘している。
 
質的研究の研究デザインのとらえについて、様々な人たちの定義やモデルを紹介しているんだけど、ある意味、どれも量的研究との違いをあえて際立たせるために定義しているようにも感じられた。
 
 
〇デザインの構成要素とトライアンギュレーション
 
研究デザインの構成要素として、サンプリングや意図された比較、意図された一般化、読者と執筆などがあげられ検討されているのが面白かった。研究デザインというものを単なる計画書のようなものでとらえるのではなく、研究全体に与える要素として述べていたからである。
 
大学院で何度も出てきた言葉「トライアンギュレ―ション」にも触れられており、一つの方法論的アプローチだけでなく、研究視覚を洗練、熟考することで研究デザインをより確かなものへと変容させられることを述べている。
 
自分の大学院では定期的にグループと呼ばれる単位で、各自の研究を検討し合っている。量的研究の人もいるし質的研究の人もいる。こうした取り組みは、トライアンギュレ―ションと言っていい。
また、自分が関心のある質的研究と量的研究の混合アプローチもトライアンギュレーションとしての考察である。
 
 
〇2つの研究事例
 
この章で紹介されていた2つの研究事例は、述べられてきた解説の実際を事例を通して理解することができ有益であった。事例を通して説明されていることで、研究当初にあった包括的で複雑な関心が焦点が定まった研究へと進化していくかが理解しやすい。
 また有名な専門家たちでさえ、予定にはない事態に制約を余儀なくされながら、すすめている様子が感じられ。(特に質的研究はその傾向が強いように感じる。)親近感がもてた(笑)。研究そのものに七転八倒して取り組んでいるのは私だけじゃないさ。
 
 
〇立ち戻る場所。 リサーチクエスチョン
 
要するに良いデザインは明確な焦点をもっていて、明確なリサーチクエスチョンがあることだという。
 
『研究デザインとリサーチクエスチョンによって、研究を、リサーチクエスチョンに答える本質的な課題へと絞り込むことが出来る。』(p65)
 
『良いデザインは明確な焦点をもっていて、明確なリサーチクエスチョンをめぐって作られる。』(p65)
 
リサーチクエスチョンがしっかりすれば、研究がぶれても、また立ち戻れるってことなんだろう。
大学院に入ってから何度も指導教官から教わったことと同じ。